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活動報告

IIDA5月月例会「伊勢型紙セミナー@紀尾井アートギャラリー」(2016.7.1)

5月月例会は聖徳大学教授の北村弘明先生を講師にお迎えして紀尾井アートギャラリーで開催されました。
IIDA日本支部では『NIPPON DESIGN 2016』を第2弾としてPRJECTを立ち上げ進行中です。その一環として今回のセミナーにスポットをあててみました。

本題に入る前に文様についての概念として記号、図形であり物の表面に飾るために付けられた図としてのシンボリーイメージとしてあります。また象徴的文様、宗教信仰の対象など表現の技法であり、見えないものの代用物としての形を表現するものであった。長い歴史の中、計り知れない文様が意味のある物を表現する美意識下の基、培ってきたという事であつた。

日本の代表的な文様の由来について青海波(せいがいは)、手彫りの技が点で表現され半月のうねりが染色されると手作りの味が出てくるという事で人気の柄であったそうです。
立涌(てたてわく)、亀甲(きっこう)、鱗、籠目、菱、三崩し(さんくずし)、点、市松、など謂(いわれ)れのある柄であり興味深い内容でした。
三角形は磁力があり魔除けとして三途の川を渡るときの死に装束として使われていたなど興味津々のお話をお聞きしました。

着物の型染の伊勢型紙は日本が誇る文化遺産であることは周知のとおりですが、知っている人はどの位でしょうか。
その歴史は古く奈良時代に大陸から伝わり現在の鈴鹿市白子・寺町に伝わり1000年以上にわたり栄えてきました。
この地が江戸への商業地であり奈良、京都への内陸へのルートで発展する要因であったといわれています。
寺の桜の葉の虫食い葉を見て着想を得たと云われています。

【型紙の技法】

1. 道具類は刃先が花弁のようになっており一つの文様となったものを一突きで彫り抜く技法

2. 錐彫(きりぼり)りは刃先が半円形となって小さい円で穴として彫っていく文様

先生のお母様の着物のはぎれをご持参下さり鮫小紋の細かい点を並べた小紋柄で手業のぬくもりが伝わってくるものを感じました。
遠目には無地に見えますが秘めたる美の極みを感じるものであり武士の裃などに使われ粋でおしゃれアピールしたという事です。それから伝播して女性の着物として当時、贅沢は禁止であったが故にお洒落を流行らせる1つとして色無地として格調高い着物の扱いであつたといわれています。

3. 縞子彫 縞子柄を彫っていく方法で線がずれると柄に狂いが生じて難しい技法であった。太さ、間隔など精密さを要するので一気に彫らねばならず休憩は出来ない。

4. 突彫 針のように細く光らせた刃先で彫っていく技術

彫師は男性のみとされていた。和紙を3枚以上重ねて彫る作業は力が要ります。染絵師、糸入れは女性として分業されてそれぞれの過程を経て当時の流行の柄を反物に染められ着物に仕立て上げられます。
彫師は上記の技法の彫師として一生涯1つの技法を極めて行ったという事だそうです。
職人さんの低力があってこそ伝統技術が今に息づいている事に感慨深いものがあります。

日本人の繊細な美意識と四季の移ろいを大切に想う心が日本の伝統工芸の文化遺産となり着物文化の究極の匠の技を生み出し伝承されてきましたが、近代に入り時代は変わり洋服文化となり着物の需要は限られてきてしまい家業を継ぐ者も激減し、後継者育成をするため町ぐるみで取り組んでいらっしゃいます。

北村先生のお話は日本文化の極みを研究されていらっしゃり大変興味深い内容でした。
その時代のライフスタイルとともに文化が熟成されてきている奥の深いセミナーでした。あっという間の時間でした。

紀尾井アートギャラリーでは素晴らしい作品が四季に合わせて展示されています。
日本の季節の繊細な美意識を堪能することが出来ました。
是非、紀尾井アートギャラリーを訪れてみては如何でしょうか。

今回のセミナーにご協力くださいましたリリカラ営業本部本部長の城谷様よりリリカラが「新日本様式」日本をテーマに2008年より取り組み始めて日本の伝統文化、技術を現在のテクノロジーで融合させていらっしゃり、その一つの伊勢型紙の意匠を活用した新たなプロジェクトとして他業者様と構築されていらっしゃる旨のお話を伺いました。

フォーラム 安東 薫

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