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会員の視察・旅行記

吉田亜希子のUSA JOURNAL 2016年6月号(2016.6.1)

渡米してから2年。私達のアメリカ生活もいよいよこの6月末で終わりを迎えます。2年前の6月、初めてアメリカに降り立ち、自然いっぱいの美しいバージニアの空気を胸いっぱい吸い込みながら、「あぁアメリカ生活が始まるんだ」と感じたあの日が本当に昨日のように感じられます。
ただ逆に、一つ一つ思い起こしてみれば様々なことがあり、またその全てが驚きと発見の連続…。人種のるつぼと言われるアメリカで、様々に違う価値観、考え方、生き方、人々に出会ったこと。ただその一方でお互い語り合って見れば、どれだけ生きてきた環境や、信じている宗教、肌の色が違っても、皆同じ笑顔で笑い合えること…。楽しかったことや嬉しかったことも、大変だったり辛かったりしたことも全部合わせて、今は本当に、このバージニアの風景の様にキラキラとした思い出となりました。

そんな訳で、このUSA JOURNALも帰国に伴い今月号が最後となります。そんな最終号は、5月に最後のLong tripということで主人と行ってきたYellowstone National Parkについて。降り立った美しい空港や、宿泊したPark内のOld faithful inn など、美しい自然と共にインテリアも沢山楽しんでいただける写真満載でお届けします。

誰でも一度は耳にしたことがあるであろうYellowstoneは、アイダホ、モンタナ、ワイオミングの3州にまたがる8,980平方km(東京都の約4倍!)もの広さを誇るアメリカ国立公園の一つ。1872年に世界で最初の国立公園として指定され、1978年、世界遺産に登録されました。

1800年代初頭、当時のアメリカ大統領にて派遣されたルイス・クラーク探検隊は、まだ多くの未開の地があったアメリカ大陸で、初の陸路横断に成功しました。その際に現在のYellowstoneの地で彼らが見たものは、大地が揺れ動き、七色に光る池があり、地面からは水蒸気が吹き上がる…この世のものとは思えない世界。当時は誰も彼らの言うことを信じず、本格的な調査が半世紀近く遅れたと言われています。そして今回、私が見たのも正にその言葉そのもの。絵の具を溶いた様な鮮やかな色を放ちながら、グツグツと音を立てて湧き出る温泉、至る所で真っ白な煙を上げて高く噴き出る間欠泉、石灰岩が蓄積されて出来た色とりどりの断層丘…。

そしてそれらに加え、荒々しい滝や、対岸が見えない程に巨大な美しい湖、バイソンやエルクが群れを成す広大な緑の平原…。当時この地を調査した人々が「この霊域はすべての人類・生物に自由と幸福を与えるために神が創造された」と言った通り、本当にどこか非現実的な荘厳さに圧倒される、神秘的な本当に美しい場所でした。

前述の通り、広大な敷地を誇るYellowstoneは公園内に9つの宿泊施設が有ります。今回私達が宿泊したのは、その中の一つ、Old faithful inn。国定歴史建造物でもあるこのホテルは、1904年に公園内で最初の宿泊施設としてオープンしました。建築は当時若干29歳であったアメリカの建築家Robert Reamer。彼はその類まれなる才能で、ラグジュアリーなデザインでありつつ、建材にはこの地で採った火山岩やパインウッドを使い、そしてそれら一つ一つの岩や木を、出来るだけ自然に近い形で採用することで、見事にこのYellowstoneの美しい景観と建築の融合に成功しました。

後にRobert Reamerの娘が彼について「父は非常に純粋に、創造の喜びの為に生きた」と語ったと言われていますが、ホテルの中にはそんな彼の想いや人柄までもが感じられる遊び心があちこちに。ロビーの中心で客達を迎える巨大な火山岩の暖炉や、その頭上で創業当時から時を刻む振子時計。天井付近には幼少期の空想から着想を得たと言われるCrow’s nest (カラスの巣)と呼ばれる小さな見晴らし小屋も。素晴らしく計算され熟考された建築でありながら、何とも言えない暖かさで来訪者を包み込むこのOld faithful inn。コーヒーやワインを片手に、あちこちに置かれたロッキングチェアに座り、振子時計のカチカチという音を聞きながら大自然の中で静かに流れる時を楽しむ…、そんな何にも代えがたい本当の贅沢を与えてくれる素晴らしいホテルでした。

そして今回の旅行で、もう一つ私が強い印象を受けたのが、行き帰りにYellowstoneへの最寄り空港として利用したJackson Hole Airport。ここはYellowstoneのすぐ南に位置するもう一つの国立公園、Grand teton National Parkの中にあります。よくある近代的で無機質な他の空港達とは全く違う趣で、非常に美しくモダンでありながら、山のロッジを思わせる暖かな雰囲気。地産の木材を使い、剥き出しの構造体が特徴的なそのデザインは、正に現在のParkitecture(ParkとArchitectureの融合を目指しアメリカ国立公園局にて20世紀初頭に推奨された建築スタイル)と言えるかもしれません。非常に小さな国内線空港の為、ボーディングブリッジ等は一切無く、飛行機から降ろされるタラップで滑走路へ直接降立つのですが、そこには息を呑む素晴らしいGrand tetonの山々!。飛行機を降りた瞬間、そして又この土地に別れを告げる瞬間まで、その360度の大自然が私達を迎え、また見送ってくれました。

昨年の1月より書かせて頂いたこのUSA JOURNAL、拙い文章を読んで頂いた皆様、本当にありがとうございました。アメリカの暮らしや建築、インテリアについて、少しでもお届け出来たらと思って書かせて頂いておりましたが、逆に私自身、目で見たことを改めて活字に起こすことで勉強にもなり、とても良い思い出にもなりました。アメリカでの2年間、恥ずかしながら実は日本をあまり知らないことに気付く瞬間も多かった様に思います。それも含め、ここで学んだ貴重な経験の数々を、日本でどんな形で役に立てることが出来るだろう…?そんなことをぼんやり考えながら、部屋中を埋め尽くしつつある帰国便のダンボール達と格闘する今日この頃です…。

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